もしもウェルスナビがビットコインに投資していたら(独自に実証運用中)

ウェルスナビの魅力のひとつは、とっても真面目なポートフォリオと運用アルゴリズムで、初心者でも安心して投資をお任せできるところにあると思います。私もその真面目さに魅せられ、ウェルスナビを使って長期投資を始めた一人です。

このブログはその魅力をできるだけ多くの人に伝えたいという、完全に個人的な思いから始めたものです。一方で、ちょっとした遊び心も加えることで、真面目さと面白さを両立できないかとも考えておりました。例えば、ポートフォリオに暗号資産(仮想通貨)があったらどうなるか?とか。さすがにこんな乱暴な資産クラスをウェルスナビが採用するはずはないか…

いや、それならば自分でやってみたらどうなるのか?

こうした発想から生まれたのが、「ウェルスナビ+ビットコイン運用」です。私が2020年4月末から実証的に始めたこの運用は、本家ウェルスナビならば絶対投資しないようなアセットクラスに、ウェルスナビと同じようなアルゴリズムで投資をしたらどうなるのか?をテーマに、このブログで運用状況を報告してきました。

今日は、その仕組みを基本から少し丁寧にご紹介したいと思います。

 

資産クラス「暗号資産」のリスクとリターンを推定

暗号資産を加えたポートフォリオを構築するにあたり、まずはそのリスクと期待リターンを推定する必要があります。ウェルスナビはこのプロセスも懇切丁寧に説明してくれていますで、興味のある方はウェルスナビのホワイトペーパーをご覧ください。

今回は本来の推定プロセスを若干変更して、数ある暗号資産(仮想通貨)の中でも、ビットコインに投資するということを先に決めてしまうことにします。投資先をビットコインに絞りこむことで、ビットコインの過去の値動きだけを使って求めたいリスクを推定することができるようになります。

次に、このようにして推定されたリスクの値を、ウェルスナビと同様にブラックリッターマンモデル(もしくは資本資産価格モデル)に代入して、期待リターンの推定値を求めます。

こうして求めた資産クラス「暗号資産」(すなわちビットコイン)のリスク、期待リターン、およびこれらを含む投資機会集合が以下のように描かれます。

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濃い青色の点が各資産クラスのリスクと期待リターンの分布です。ビットコインは「暗号資産」と表記した点で、そのリスクは80.9%期待リターンは13.2%と推定されました。その他の資産クラスについては、ウェルスナビが公開しているデータを流用させていただきました。なお、ビットコインのリスクをどのように計算したのかが気になる方は、以下の記事を参考にしてください。

curvex.hatenablog.com

 

薄い青色の領域が、これらの資産クラスの保有割合を様々に変化させて実現し得るポートフォリオのリスクと期待リターンを表します。この範囲であれば自由なポートフォリオを組めるという意味で、この点の集合全体のことを「投資機会集合」とも呼びます。これを見ると、高いリターンを望むならば、大きなリスクを受け入れなければならないことがわかると思います。

一方で、同じリスクの値でも期待リターンが低いものから高いものまで、ある程度の幅があるというのも事実です。そうであれば、より高いリターンが期待できるポートフォリオを選択したほうが良いことは明白であり、投資機会集合の上端の境界線上にあたるポートフォリオを選ぶのが最良の戦略といえます。この上端の境界線のことを、効率的フロンティアと呼びますので、覚えておいてください。

これが現代ポートフォリオ理論の成果のひとつであり、ウェルスナビがポートフォリオ構築の根拠としている考え方です。ウェルスナビが言うところの「ノーベル賞受賞者の理論」とはこの理論を指しています。

黄色の点で「リスク許容度①」から「リスク許容⑤」と付した点が、ウェルスナビを使った場合にユーザーが選択できるポートフォリオです。これらのポートフォリオが、さきほど説明した効率的フロンティアの中からが選ばれていることがわかりますね。

赤色の点は、「ウェルスナビ+ビットコイン運用」でターゲットとしたリスクと期待リターンです。この付近を拡大した図を示します。

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今回のターゲットが、よりリスクをとった運用であることがわかると思います。といっても、米国株や新興国株に集中投資した場合よりリスクが抑えられています。もう少しビットコイン保有割合を増やしていくともっとリスクと期待リターンを高めていくことができますが、難しい問題も生じてくるため、今回はここを目標としました。

その問題とは、効率的フロンティアを維持しつつビットコイン保有割合を増やすためには、すべての資産の配分比率を細かく調整しなければならないという点です。今回の運用では、ビットコイン以外の資産の運用はウェルスナビに完全にお任せする方針ですので、各資産の配分比率を細かく調整していくことができません。単純にビットコイン保有割合を増やしていくと効率的フロンティアからの乖離が目立ち始めてしまいます。いつかウェルスナビに頼らずに運用できるようになったら、もっとリスクをとったポートフォリオも試してみたいですね。 

 

ウェルスナビ+ビットコインポートフォリオ

今回採用するポートフォリオは下図に示す通り、ウェルスナビのリスク許容度5のポートフォリオに、5%相当のビットコインを加えたものとします。

ウェルスナビの配分比率を全部足すとそれだけで100%になるので、ビットコインの5%分を足すと全部で105%となります。それぞれの数値を1.05で割れば全体が100%になるのですが、中途半端な数値になってしまうのでこの数値のまま進めましょう。全体が105であるということだけ注意しておいてください。 

下図の青色の枠で囲まれた部分はウェルスナビに丸ごとお任せですので、オレンジ色の範囲と、両口座をまたがるリバランスを独自に運用していきます。

私は「ウェルスナビ for SBI証券」を使っているので、ビットコインはSBI系列の、SBI VCTRADEを使って運用することにしました。もちろん、他の口座を使っても同じことはできると思います。

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ウェルスナビが推奨する運用スタイルは、「長期・分散・積立」ですので、毎月の積立投資は欠かせません。この運用では、毎月の積立額を15万7500円としました。

別に、積立額はいくらでもよいのですが、たまたま私がウェルスナビの運用で毎月15万円を積立設定していたので、この額にしました。ウェルスナビの積立額15万円に対して、5%にあたる7500円を増額したものです。

 

ウェルスナビ口座/ビットコイン口座間の資金移動

ビットコイン以外の資産の運用はウェルスナビに完全にお任せするのですが、ビットコインとウェルスナビの間のリバランスは手動で実行する必要があります。

ウェルスナビでは半年に一度、資産配分を完全にきれいな形に直すためのリバランスが実行されます。それ以外に、積立時にもリバランスのようなことが行われています。積み立てられた資金で資産を買い付ける際に、一律に同じ数量の買付を行うのではなく、買付後のポートフォリオができるだけ理想的な状態に近づくような買い方をしてくれるのです。これも一種のリバランスと呼べますので、ここではこれを積立時リバランスと呼びましょう。

以下では、積立時リバランスで、どのようにウェルスナビ口座とビットコイン口座の資金をやりとりするのかを説明します。

まず、毎月の定期積立金が入金するタイミングに合わせて、その時点での保有資産総額を計算します。これに積立額である15万7500円を加えた額に対して、理想的な配分比率に基づく「あるべき資産価格」を、それぞれの資産クラス毎に計算します。

あるべき資産価格に対する現状の資産価格との差分を計算し、それを超過評価額と呼び、いったん下図のように整理します。例えば、米国株(VTI)や日欧株(VEA)は約6万円以上の不足、金(GLD)は6万円以上の超過といった具合です。

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(上図は、2020年7月11日時点の計算結果) 

 

さきほど説明した通り、ウェルスナビの積立時リバランスでは資産の売却を行うことなく可能な限り理想的なポートフォリオに近づくように、資産クラス毎の買い付け数量が調整されます。そのために、各資産の不足額が均等になるように、最も不足額の大きな資産クラスから買い付けが行われることになっているようです。

すなわち、上図の濃い青色の部分の買付が実行されます。図の例では、米国株(VTI)、日欧株(VEA)、米国債券(AGG)、不動産(IYR)、暗号資産(BTC)の買付を行い、残りの凹凸はそのままとなります。

このうちウェルスナビ保有資産間の買付額は、ウェルスナビが自動的に調整してくれます。独自に計算が必要なのはビットコインの買付額のみであり、過不足額のみを両口座間で入出金すればよいことになります。

 

入出金のタイミングは、自動積立の入金日と一致させるようにすることにしています。特にウェルスナビから出金を行う場合、タイミングがずれると資産売却が発生してしまいます。売却が発生すると余分な税金費用がかかり、運用効率を低下させる一因になります。このような理由から、入出金のタイミングは下図のように厳密に調整しています。

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なお、私は「ウェルスナビ for SBI証券」の資金移動サービスを使っていますので、入金にも手数料がかかっていません。クイック入金には手数料がかかりませんが、3万円以下の入金はできません。少額の入金を行うには金融機関から振り込むしかなく、振込手数料がかかってしまいますので、手数料が不要な資金移動サービスを使用するのがお勧めです。

また、長期割サービスを受けている方は、途中で出金を行うと長期割がリセットされるというデメリットもありますのでご注意ください。私が使っている「ウェルスナビ for SBI証券」にはそもそも長期割サービスがありませんので、デメリットなく出金することができています。

 

 ウェルスナビ+ビットコイン運用の成績は?

以上で、この運用の考え方を一通り説明しました。このアルゴリズムに従って、私が2020年4月末から実証運用を行っています。 開始した時期が、まさにコロナショックの暴落から立ち直っていくタイミングでしたので、これまでのところ大きな利益が出ています。詳しくはこのブログの別の記事にまとめていますので、その記事を参考にしてください。

curvex.hatenablog.com

 

この記事を書いているのは、2020年1月25日です。ビットコインが史上二番目ともいえる、世間の大きな注目を集める中での急激な上昇を経験した後、いったん調整しているところです。これが二回目のバブルなのかどうかが試されているともいえるでしょう。

この「ウェルスナビ+ビットコイン運用」はウェルスナビの精神を受け継いだ長期運用です。ビットコインはバブルなのかそうでないのか、答えのない中で一定のルールに従って保有を続けることが果たして報われるのかどうか。この運用は、これからが本番です。

運用状況は毎週末に報告していますので、ぜひこのブログでチェックしてみてください。