おまかせNISAはいくら得するのか?
ついにウェルスナビがNISAに対応しましたね。2月17日より、「おまかせNISA」という名前でサービス開始となりました。ロボアドバイザーとしては初のNISA対応ということで、ますます注目が集まりそうです。ウェルスナビのWとNISAのNを同時に印象付ける素敵なロゴも特徴的ですね。
NISAには投資収益に対する税金がかからないという大きなメリットがありますが、申請に手間がかかるというデメリットもあります。また投資で損失を抱えてしまうと、普通に投資する以上に損をしてしまうというデメリットもよく指摘されています。こうしたデメリットを意識すると、NISA活用に消極的になってしまいがちです。
そこでこの記事では、おまかせNISAならば具体的にいくら得する可能性があるのかを探っていきたいと思います。得られる節税効果とその確率を具体的に求めてみることで、メリットとデメリットを比べられるようにします。もちろん、これは理論的な確率の話であることはご承知頂き、あくまでも自己判断の参考にして頂ければと思います。
少額投資非課税制度[NISA]とは
NISAは投資収益にかかる税金が非課税となる制度です。通常20.315%の税負担がなくなるわけですから、ぜひとも活用したい制度です。
NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。ウェルスナビのおまかせNISAは一般NISAのほうを使うことになっていますので、以下では一般NISAについて説明します。「つみたてNISA」は国の制度名として「つみたて」の名称が使われているだけで、一般NISAでももちろん積立投資をすることは可能です。
一般NISAは2014年から開始されました。1年にひとつずつ、5年間で5個の非課税枠が与えられるというものです。これが2サイクル行われた後、現行の制度はいったん終了することになっています。
今年2021年はすでに2サイクル目の中間地点に達した所であり、そろそろ終わりが見えてくる時期ではあります。現在は、2024年から始まる新NISA制度について議論が進められています。ウェルスナビがこのタイミングでNISA対応サービスを開始した背景には、新NISA制度でもウェルスナビが使える方向で、国との話し合いが決着できる目途が立ってきたということだと思われます。現時点で公式の発表はありませんのでまだ確定ではありませんが、新NISA制度下でもウェルスナビを継続できる可能性は高いのではないかと思います。
さて、ひとつの非課税枠で投資できる金額は、現在では120万円までとなっています。各枠で買付可能な期間は最初の1年間のみで、残り4年間運用を継続できます。いつでも売ることはできますが、同じ枠でもう一度買い付けるということはできませんので、本当にそこで売ってよいのかは慎重に判断しなければなりません。
まとめると、下図の通りです。非課税枠をフルに活用すれば、600万円まで、非課税での投資を行うことができます。
おまかせNISAで運用した場合の節税額
それでは本題です。ウェルスナビのおまかせNISAではいったいいくら得することができるのでしょうか?
これを計算するために、ウェルスナビが採用している投資理論を用いたシミュレーションを行うことにします。詳しい計算方法は以下の記事を参考にしていただければと思いますが、簡単に説明すると以下の通りです。
- ウェルスナビのリスク許容度5のポートフォリオで運用する
- 総資産額は、与えられたポートフォリオの期待リターンとリスクの値を持つ幾何的ブラウン運動により決定されるものとする
- 各資産クラスの期待リターンはブラックリッターマンモデルあるいは資本資産価格モデル(CAPM)により算出する。リスクは過去の価格変動から推定する。
- モンテカルロ法によるシミュレーションを行い、10000回の試行結果から確率分布を求める
計算は以下の2パターンを行うことにします。
パターン1:毎月10万円の積立投資
パターン2:年初に120万円の一括投資
投資期間は本来のNISA制度に沿って5年間とします。さきほど説明した通り、現行のNISA制度はあと3年間しかありませんが、おそらく2024年開始予定の新NISA制度でもウェルスナビは使えることになるだろうと、私は予想しています。
パターン1:毎月10万円の積立投資
パターン1は毎年の非課税枠120万円を、毎月10万円の積立投資で埋めていく運用パターンです。貯金額は多くないけれど、毎月給料がもらえており、頑張って最大限投資に振り向けたいという人に向いています。
5年目までに合計600万円を投資し、以降は非課税枠が終了するごとに資金を回収するモデルです。
結果は上図の通りです。600万円の投資が50%の確率で753万円以上になり、153万円の投資利益を得ることができます。ただし、ウェルスナビの投資先は米国市場に上場するETFですので、米国内の税金がかかり国内利益は138万円となります。日本の非課税制度もアメリカの税金を非課税にすることはできません。(当たり前)
この利益に対し、通常の口座であれば、所得税/住民税合わせて28万円がかかることになるので、おまかせNISAを使えばこの額がそのまま節税額となります。
参考までに、30%の確率では47万円以上が、70%の確率で11万円以上が節税できます。
パターン2:年初に120万円の積立投資
パターン2は毎年の非課税枠120万円を、年初に一括で投資する運用パターンです。年初からフルに運用できるので、余裕資金が多めの方に向いています。
5年間で合計600万円を投資し、非課税枠が終了するごとに資金を回収するという点ではさきほどと同じです。
結果は上図の通りです。600万円の投資が50%の確率で767万円以上になり、こちらも同様に国内での利益は150万円となります。これが通常の口座であれば所得税/住民税合わせて31万円がかかることになるので、おまかせNISAを使えばこの額がそのまま節税額となります。
参考までに、30%の確率では53万円以上が、70%の確率で12万円以上が節税できます。
実際に運用を始める上での注意点
前項の結果から、50%の確率で概ね30万円程度の節税効果が得られることがわかりました。まだNISAを使用していない方でこの額が魅力的に映るという方は、ぜひおまかせNISAの活用を検討してみてはいかがでしょうか?
また、すでにNISAを活用しているけれども、これまでの運用成績が良ろしくなく、今後の展望も描けないという方は、NISAの口座変更を考えてみるのも良いと思います。乗り換える目安として、年5%の利益が安定的に稼げているかどうかを考えてみてください。今のままでもそのくらい稼げているという方はそのままの無理に変更する必要はありませんが、とてもこのレベルに届かないという方はウェルスナビへの乗り換えも選択肢に入ってくるでしょう。
その場合、非課税枠を設定できる口座は1金融機関に限られますので、すでに他の金融機関でNISA口座を開設している方は、その金融機関に対して非課税口座の解除を申請したうえで、ウェルスナビでNISA口座を設定することになります。ただし、今年すでにNISA枠で投資を始めてしまったという方は、今年はもう変更できません(来年まで待つ必要があります)。解除は非課税枠毎に行うこともできますが、金融機関によっては電話で問い合わせる必要があるなど、多少手間がかかります。
最後に、注意点です。
1. 外国税額控除
おまかせNISAでは概ね30万円程度の節税効果が見込めるのですが、実は通常の口座であっても外国税額控除を活用すれば課税額の半額程度が還付されます。
もちろん、確定申告が必要である点や、他の外国所得の多寡によっては必ずしも半額還付されるというわけではないという点に注意は必要です。しかし、非課税口座のメリットが半減してしまう可能性がある点はやはり重要です。
投資初心者には難しいと思いますのであまりおススメはできませんが、もしも国内株式等で年5%程度の利益を安定的に稼げるという中級者以上の方であれば、NISAでは国内株式を運用したほうがメリットが大きくなります。その場合は次に説明するデメリットを注意深く検討し、損失リスクの最小化を図ってください。
2. 損益通算できない
NISA口座で運用する投資損益について、他の金融商品との損益通算はできません。損失が出た状態でNISAでの運用をやめてしまうと、通常の口座で運用した場合よりもかえって多くの税金を支払うことになってしまいますので、この点はよく認識しておいたほうがよいと思います。ウェルスナビでも、当初3年程度は利益マイナス状態が続く可能性が30%くらいはあります。3年って結構長いですよね。なんとなくで始めてしまうと、投資が嫌になって辞めてしまう(一番よくない辞め方です)ので、ぜひ、しっかりと理解したうえで始めてください。
3. ウェルスナビ提携サービスでの対応
最後の最後。おまかせNISAが使えるのは現時点では本家ウェルスナビのみであり、「ウェルスナビ for ○○」といった提携サービスでは対応していないようです。この辺の差があるのは残念ですね。