ウェルスナビ 自動リバランスの効果を探る

ウェルスナビには自動リバランス機能があります。これは、ユーザーが保有する各資産クラスの保有比率を理想的な状態に保ってくれる機能で、資産の一部売却を伴うリバランスが年2回(標準的な場合)行われるほか、積立時にも実行されます。積立時のリバランスは、価格低下とともに保有比率が下がっている資産を多めに買い付けることによるもので、資産の一部売却は行われません。

通常、「ドルコスト平均法」と呼ばれている買付方法が、ひとつの銘柄に対して一定額を買い付けるだけなのに対し、ウェルスナビの積立時リバランスでは、ポートフォリオ全体でこのような買い付けを行ってくれます。

今回は積立時の自動リバランスに焦点をあて、その効果がどれほどあるかを探ってみます。

通常のドルコスト平均法との違い

通常、ドルコスト平均法とは、ひとつの銘柄を一定の金額で積み立てていくことを指します。先日(2月9日)の記事で、「ウェルスナビ代替運用」と称して、ウェルスナビと同じ資産クラス(ETF)を定額購入した場合のシミュレーション結果をご紹介しました。この時の買い方が、通常の意味でのドルコスト平均法です。

積立時リバランスの効果をわかりやすく示すため、この「ウェルスナビ代替運用」と、ウェルスナビシミュレーション(ウェルスナビ模擬と称します)とで、各ETFの毎月の購入口数がどのように変わってくるかを図示してみましょう。

計算条件は前回示したシミュレーションと同じで、計算期間は2018年1月から2年間、毎月15万円の積立としています。ただし今回は、どちらのケースでも手数料をゼロ、購入単位を0.001口に設定し、毎月ベースで売却することもあり得るように変更しました。*1

下図で、折れ線は米国株(VTI)と金(GLD)の価格(円建て)を示しています。左側の目盛りで読んでください。縦棒は、代替運用(通常のドルコスト平均法)と、ウェルスナビ模擬それぞれでの、毎月の購入口数です。購入口数は右側目盛りです。

代替運用では毎月一定額の購入ですので、価格の変化に応じて多少の変動はあるものの、毎月同程度の口数の購入が保たれています。

一方ウェルスナビ模擬では、価格の上昇局面では購入口数が抑えられ、下落時に購入口数が増加します。最も特徴的なのは2018年12月でしょう。米国株が急落し、通常の倍近くの口数を購入しています。同時期に金は価格を保ったため、一部売却が生じています。

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このように、リバランスは相場が変動するときに効果を発揮し、通常のドルコスト平均法に比べて平均買付価格を押し下げる効果が大きいと期待されます。

一方、長期持続的な上昇(下降)にはついていくことが難しく、2019年12月には米国株価が上昇しているにも関わらず、通常のドルコスト平均法よりも多くの口数を購入することになってしまいました。一概にすべての場合に有効な買い方というわけではないということです。

リバランスの効果を探る

それでは定量的な評価を行ってみたいと思います。しかし、これは思ったよりも難しい作業になりました。今回ご紹介する方法はあくまでもひとつの側面としてご理解いただければと思います。

下図がその定量化の試みの結果です。代替運用(各資産クラスごとにドルコスト平均法で買い付けを続けた場合)と、ウェルスナビ模擬運用(リバランスしながら買い付けた場合)の両ケースで、資産の増加がどれだけ異なるかを評価しています。

わかりにくい名前ですが、「超過資産増加額比率」と名付けています。リバランスを行うことで、行わなかった場合に比べて資産がどれだけの割合で増加したのかを、パーセントで表示したものです。

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記号を導入しましょう。代替運用を行った場合の資産額をAとし、その増加額をΔAと書きます。同様にウェルスナビ模擬運用を行った場合の資産額をW、その増加額をΔWと書きます。増加額を計算する期間はちょうど1年間とします。その増加額を、期間中の平均的な資産額で割ることで、増加額の全体に対する割合を求めます。

この割合が、リバランスを行うことで、行わなかった場合に比べて資産が何パーセント増えたのかを表しています。

これを期間の取り方を変えて12パターン計算した結果が上の図です。横軸は各計算期間の終わりの月を意味します。例えば、2018年1月から2019年1月までの1年間で、リバランスを行うことで増加した資産額の割合を、2019年1月の部分にプロットします。図より、その値は約0.2%弱でした。

さて、長々と計算過程を書いてきました。あまりうまい方法ではないかもしれませんでしたが、これがひとつの評価結果です。期間にもよりますが、0.0~0.5%の間で分布しています。すなわち、期間はかなり限定的ではありますが、以下のような結論が得られたといってよいでしょう。

  • 少なくとも、リバランスによって損を被ることはなかった
  • 最もうまくいったケースでは、リバランスをしなかった場合に比べて年率0.5%の改善効果が得られた
  • 平均的には、リバランスをしなかった場合に比べて0.2%程度の改善効果が得られた

最後にちょっと補足です。

上の図で超過資産増加額比率が最も低かったのは2019年8月でした。この時は、日欧株(VEA)が長期下落傾向にある中、リバランスによる買い増しが続いていた時でした。下図を見てもわかる通り、無限ナンピンといったら言い過ぎだと思いますが、近いものを想像していただければと思います。

こういうこともあるので、リバランスがいつでも最高の戦略というわけではなさそうです。もちろん、日欧株が復活してくれたら、これらの苦労がすべて報われるのですが…果たしてそんな未来はいつか来るのでしょうか。

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ウェルスナビ模擬運用シミュレーションは、こちらの記事を参照してください。 

curvex.hatenablog.com

 

 

*1:現実的にはこのような運用は実行できませんが、運用額と積立額の大小に依存することなく、リバランスの効果を最も一般化して考えられるように、このような条件を導入しました。