ウェルスナビの運用を真似できるか? (その1/改訂)

ウェルスナビの運用アルゴリズムはとてもシンプルです。その上、詳細なデータをホワイトペーパーとして公開してくれているので、その方法を真似て自分で運用することもできてしまいそうです。「そっくりそのまま真似すれば、高い手数料を支払わなくて済むのでは?」と考えたことのある方も少なくないのではないかと思います。

今回は、ウェルスナビのサービスを使わずに、既存の他のサービスだけを使って、ウェルスナビと同じような資産運用ができるかどうか?を検証してみたいと思います。ただし、私はすでにウェルスナビで資産運用を行っており、実際にそのようなことを試すことはできませんので、シミュレーションを行ってこのことを確かめてみます。名付けて、カーブのウェルスナビ代替運用シミュレーションです。

 

代替運用の方針

ウェルスナビの運用を真似する(以後、これを代替運用といいましょう)にあたって重要な方針をひとつ決めます。それは、「毎月の積立を自動実行できること」です。

毎月ETFを積立購入する際に、その時点での各資産クラスの保有比率を計算し、リバランスを行いながら購入口数を決定すれば、ウェルスナビとほとんど同じ運用ができます。しかしこれはかなりの手間です。1回や2回であれば大した手間を感じることなくできるでしょうが、毎月これを継続するには相当な意思の力が必要だと思います。相場が急落している中、ビビることなく計画通りの購入ができるでしょうか?たまたま仕事やプライベートで忙しかったりすると、購入を遅らせる言い訳にしてしまいそうです。何日か様子を見ていたら急反発して購入するタイミングを逃した、なんてことになれば、運用継続のモチベーションは大幅に下がってしまうでしょう。

そこで代替運用の方針として、運用開始時に一度設定さえすれば、あとは毎月自動的に積立を実行してくれるサービスを使用することにします。例えばSBI証券では、海外ETFの定期購入機能があります。毎月特定の日を指定して、指定した口数または金額で自動的に購入を行ってくれる機能です。

目指すポートフォリオはウェルスナビの「リスク許容度5」で、毎月15万円の積立を行うと仮定します。米国株、日欧株、新興国株は、ウェルスナビのホワイトペーパーに記されているポートフォリオ配分比率に従って定額購入します。具体的な金額は下表の通りです。米国債券、金、不動産は配分比率が小さく、毎月の購入口数が1口に達しないため、各1口購入することにします。

また、配当を再投資する仕組みがないため、現金で保有し続けます。

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代替運用シミュレーション

それではさっそくシミュレーションしてみましょう。私がウェルスナビで積み立て運用を開始したのが2017年末でしたので、これと全く同じ期間のシミュレーションを行います。ただ、日々の価格変動や積立購入の日付を厳密にシミュレーションすることは難しいので、月単位で粗い計算を行うものとし、積立購入時のETF価格、為替レートは毎月最終取引日の終値で決済できたとします。分配金の受取も同様に考えましょう。

ウェルスナビと大きく異なるのが手数料です。ここでは、現在のSBI証券の手数料率を採用します。記事執筆時点での購入手数料率は、0.45%+消費税となっています。

実はこの手数料、近年はどんどん安くなってきています。きちんと調べていませんが、このシミュレーションの開始時点である2年以上前には「最低取引手数料」というものがあり、どんなに少額な取引にも一定の金額がかかっていたはずです。現在、SBI証券の海外ETF購入ではこれが撤廃され、上記の通り0.45%+消費税だけになっています。簡単のため、今回のシミュレーションでは2年前にさかのぼってこの手数料体系が存在していたと仮定しましょう。また、消費税率は当初から10%であったとしておきます。

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ウェルスナビの運用を真似した結果(代替運用シミュレーション)

2019年12月末までシミュレーションしてみました。その結果がこちらです!

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カーブのウェルスナビ代替運用シミュレーション結果

総資産額は5,087,255円でした。拠出総額は4,701,019円なので、約38万6000円の利益が出ている計算結果となりました。

リバランスが一切なかった割に、目標とするポートフォリオに近づいていますね。米国債券、金、不動産は毎月1口購入のため、目標を若干上回っています。その分株式保有比率が低めになりました。日欧株、新興国株は株価がさえず、ウェルスナビのようにリバランスでガンガン買い付けることはないので、保有比率の低さが目立ちます。

米国株(33%)、日欧株(30%)、新興国株(11%)

米国債券(7%)、金(9%)、不動産(6%)

現金については、分配金の再投資を行っておらず、時々積立額以上の買付を行うことで減ることがあるものの、2019年末時点で19万円以上の保有となりました。

実際のウェルスナビ運用と比較

上記と同期間、実際に私がウェルスナビで運用した結果は以下の記事にまとめています。

curvex.hatenablog.com

 

実際のウェルスナビ運用結果ではこの記事の通り、2019年12月末時点での総資産額が5,701,802円でした。

ここで、シミュレーションと比較するため若干調整しておきます。ウェルスナビでは2019年12月分の分配金を翌1月に受け取っているので、税引き後受取額を加えておきます。同様に、2019年12月分の運用手数料は翌1月に支払っていますので、これを差し引きます。それから、私のウェルスナビ運用結果にはDeTAX(税金最適化)発動分が入っているので、その額1万4400円分は差し引いて比較しておきましょう。

これら調整の結果、総資産額は5,077,420円となりました。本記事で行った代替運用シミュレーション結果よりも、9,835円(約1万円)低い結果となりました。

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さすがに手数料率がぜんぜん違うので、ウェルスナビの勝ちというわけにはいかなかったようです。

ただし、この結果がすべての運用パターンにあてはまるわけではないことに注意したいと思います。本記事の代替運用では毎月積立額を比較的大きめに設定していますが、この額を下げると、定期購入がだんだんと難しくなってきます。米国債券(AGG)、金(GLD)、不動産(IYR)はすでに毎月1口の購入としていますので、ウェルスナビのミリトレのような単元未満の取引ができない場合は、定期購入することができなくなってくるでしょう。毎月積立額によってはウェルスナビの代替となる運用がそもそもできない、ということもあるかもしれません。

上記の結果でも、DeTAX(自動税金最適化)分を加えればウェルスナビの勝ちですし、手数料の割には良い運用ができているという前向きな評価も十分あり得ると思います。

最後に、今回の比較は2017年末から2019年末の2年間に限定されており、ごく短期間での中間的な評価に過ぎないという点にも、注意しておきたいと思います。

この結果をあくまでひとつの参考としてご覧いただければと思います。

 

(本記事は、2020年2月3日付同名の記事の誤りを修正し改訂したものです。)