米国株のリスク(標準偏差)を検証

ウェルスナビのホワイトペーパーには、米国株の期待リターンとリスクを以下の通り想定していることが書かれています。

期待リターン:7.2% リスク:12.9%

以前どこかのブログで、「このリスク想定は低すぎるのではないか」という記事を読んだことがあるので、ごく限られた期間ではありますが、私の運用期間である2017年8月以来のリスクを検証してみました。

VTIの価格推移 

ウェルスナビでは米国株としてバンガード社のVTI(バンガード®・トータル・ストック・マーケットETF)を採用しています。2017年8月以降のVTI価格を下図に示します。橙色の線が各月末時点でのVTI価格です。2017年8月末時点での価格は126.98ドル、2019年12月末時点での価格は163.62ドルでした。

青色の線は配当込みの仮想的な価格で、次のように算出しています。すなわち、配当が振り込まれた月の末日に、配当額から30%の税金を差し引いた額に相当する口数を再投資したと考え、以降の価格は再投資を考慮した価格で計算します。例えばある月の価格が150ドルで、配当が0.86ドルあったとします。税金を差し引くと受取金額は0.6ドルとなり、0.6ドルで購入できる口数は0.004口なので、以降の価格は本来のVTI価格の1.004口分とみなすという計算です。これを配当を受け取る度に繰り返します。

このように計算すると、2019年12月末の配当込み価格は、169.01ドルと計算され、本来のVTI価格を5.39ドル上回ります。

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VTIの標準偏差は?

それでは、配当込みのVTI価格に対してリスク(標準偏差)を計算してみましょう。

まず、1年の期間をおいたリターンを各月毎に計算します。例えば2017年8月末(126.98ドル)から2018年8月末(151.75ドル)までのリターンは19.5%となります。同様の計算が、期間中17個計算できます。これらを母集団とみなして標準偏差を計算すると、8.46%となりました。ウェルスナビが採用している12.9%よりもリスクは小さいという結果となりました。

次に、月次リターンを年換算するという方法でも計算します。この方法は、月次リターンが正規分布をとると仮定した場合に成り立つ方法で、月次リターンの標準偏差をルート12倍(約3.46倍)して求めます。例えば2017年8月末(126.98ドル)から2017年9月末(130.12ドル)までのリターンは2.5%となります。同様の計算が、期間中28個計算できます。これらを母集団とみなして標準偏差を計算すると4.05%で、これをルート12倍することにより、年率換算リスクは14.02%と求まりました。

さきほどの8.46%とはずいぶん差があります。これは、月次リターンが正規分布をしていないことに起因しています。以下、年間リターンと月次リターンの度数分布を示します。確かに月次リターンは正規分布とは言えず、年間のリターンとしてはやや過大に評価されているであろうことがうかがえます。

 

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 結論:米国株のリスクは(ここ2年半のところ)高くない

 月次リターンを年率換算すると、リスク(標準偏差)は14%を越え、ウェルスナビ想定の12.9%よりも若干高いという結論が得られました。しかしこれは、年率換算の計算が過大なだけであり、実際に年間でリスクを計測したところ、8.5%程度のリスクに収まっていることがわかりました。少なくともここ2年半のところでは、想定リスクが低すぎるということはない、ということです。

 

最後に、VTIのファクトシートを確認しました。*1

ファクトシートは、過去3年間の月次リターンを基に計算したとあり、その値は12.53%でした。

このことからも、リスクの想定値は妥当なところではないかと考えられます。