ウェルスナビのリスクを検証(その2)
前回の記事「ウェルスナビのリスクを検証(その1)」では、ウェルスナビがホワイトペーパーで示しているリスクの値について、過去の実際のリターンを用いた検証を行いました。そこでは、ひとつの資産クラスについてのリターンのバラツキを表す「標準偏差」を扱いました。
ところで、複数の資産クラスを束ねたポートフォリオ全体のリスクを取り扱うためには、資産クラス間の相関係数が重要な役割を担います。ウェルスナビのホワイトペーパーには、以下の表のように、相関係数の想定値も示されています。
今回は、この相関係数も同じような方法で検証してみることにします。
といっても、やり方は簡単です。各資産クラスのリターンの系列を集めてきて、ExcelのCORREL関数を適用するだけです。
各資産クラスのリターンは月次リターンとし、下記の通り算出するものとします。
ここで、Rはリターン、Pは資産クラスの価格、Dを分配金の額とします。
添え字「i」は、「月次」を表すものとします。上の式は、ある月「i」におけるリターンを表したもので、月「i」の月末における価格がP_i、ひとつ前の月「i-1」の月末における価格がP_i-1です。これらの差が値上がり益となります。
また、月「i」の期間中に受ける分配金の額をD_iとしています。
今回も前回同様、直近7年間(2013年3月末から2020年3月末)の84か月を対象とします。7年間の検証期間中、月次のリターンは84個とることができますので、これら84個の系列データについて相関係数を計算します。
下記のグラフは、米国株(米国株ETFであるVTI)の月次リターンと、米国債券(米国債権ETFであるAGG)の月次リターンを並べて描いたものです。VTIは左目盛り、AGGは右目盛りを見てください(スケールは5倍違います)。
ところどころ、株式のリターンがマイナスの時に、債券のリターンがプラスになっているところがあります。これは株式と債券の逆相関が表れている一例です。このような傾向が強いほど、相関係数はマイナス1に近い値として算出されます。これが、ポートフォリオを組むことで全体のリスクを低減することができる本質的な理由です。
それでは、相関係数を計算した結果を示します。
本記事冒頭に示したウェルスナビホワイトペーパーの値と若干の差異はありますが、概ね一致していることが確認できました。最大でも0.1程度の違いに収まており、最適ポートフォリオを組むうえで大きな影響は生じないでしょう。
前回記事の結果と併せて、ポートフォリオを組むという観点からも、ウェルスナビの想定リスクが実際のリスクをよく表しているということが検証できました。
前回記事はこちらを参照してください。
(参考)ポートフォリオのリスクについては以下の記事も参考になると思います。