ビットコインの長期投資家には、四半期ごとにコロナショックが訪れる

ビットコインの荒い値動きが続いています。私のブログでも、1月8日に「儲かってます~」宣言したものの、翌日から4連敗。1月12日までに2割近くもの下落となりました。今はまた一時的に盛り返していますが…

私は「ウェルスナビ+ビットコイン運用」といった記事を書いており、まるでビットコイン投資を推奨しているかのように見えると思いますが、決してそうではありません。ウェルスナビで初めて投資をやってみました、というような投資初心者には特にです。

この運用は、本家ウェルスナビならば絶対に投資しないようなアセットクラスに、ウェルスナビと同じロジックで長期投資するという点に面白さを感じた方々が、興味半分で見守ってくれれば良いなぁ、と思い始めただけの企画です。

そんなわけで今日は、ビットコインのリスクをまじめに検証する記事を書こうと思います。

curvex.hatenablog.com

 

 

ビットコインの価格履歴と月次リターン

まずはビットコインの過去の値動きをおさらいします。

下図は、2014年1月末から2020年12月末まで、各月末のUSドル建てビットコイン価格を描いたものです。縦軸はログスケール(対数目盛)ですのでご注意ください。直近、2020年12月末の価格は、28,949ドルでした。

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データの源泉:investing.com を元に筆者作成

Bitcoin - ビットコイン過去データ - Investing.com

 

このデータから、以下の式に従って月次リターン(R)を算出します。ビットコインに配当(D)は無いので、単純に前月末の価格からの伸び率を計算するだけです。 

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上図が、2014年1月から7年間、84か月のビットコイン月次リターンです。

これが毎月の騰落率だ、というところに驚いてほしいと思います。

40%上昇だとか、20%下落だということは過去にも頻繁に起こっていました。

昨年11月からの上昇局面では、「ペースが速すぎる」「危険だ!まもなく暴落する」という警告をたくさん御覧になったかと思いますが、こうしてみると大したことではありませんね。ビットコインにとってはそのくらい普通のことなのです。

(だから安心してね、という意味ではありません。念のため)

 

ビットコイン月次リターンの頻度分布

こうして求めたビットコイン月次リターンの頻度分布をみてみましょう。 頻度分布などという数学的な話がでてくるのは、リスクの指標となる標準偏差を求めたいからです。

このグラフは、横軸に示した月次リターンが過去7年間でどのくらいの頻度で出現したかをヒストグラムで表したものです。幅はプラスマイナス2.5%で区切っています。例えば、中央の「0%」の頻度はおよそ0.048となっています。これは、月次リターンが-2.5%から+2.5%の間に入った回数が、7年=84か月のうち4回であったことを意味しています。

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図中の曲線は、このヒストグラムを最もよく表す正規分布です。

この正規分布の平均値は6.8%、標準偏差は23.2%でした。標準偏差は証券のリスクを表すときによく使われますね。注意していただきたいのは、証券で使われるリスクは年率であるという点です。ですので、年率換算するために√12倍すると、ビットコインのリスクの推定値は80.5%である、と言うことができます。

ウェルスナビの場合、リスク許容度5のポートフォリオでもリスクは11.2%ですので、いかに高いリスクをとっているかがわかります。ビットコインに投資するならば、このくらいの覚悟をしておくべきということですね。

 

ビットコインでは四半期に一度は経済ショックが起こっている

世界はいまだに新型コロナウィルスの混乱から抜け出せないでいます。2020年の春、そのウィルスの脅威が認識されることにより、世界中の株価は月間で20%も下落し、後にコロナショックと呼ばれることになる大混乱を引き起こしました。

思い起こせば、その11年余り前に発生したリーマンショックでも、月間の下落率は20%近くに達していました。この下落率がいかにすさまじいか、確率論的な解釈を試みたのが以下の記事です。当時私は、「2000万年に一度」と評価していましたが、これは理論の限界を超えて無理矢理計算した数値ですので、やや誇張されたものです。

curvex.hatenablog.com

 

ここで言いたいのは、経済ショックと言われる混乱でも、月間の株価下落率は20%程度だということです。

ビットコインの月次リターンの標準偏差は23.2%。確率理論によると、正規分布標準偏差以上の騰落率が生じる確率は約32%です。つまりビットコインでは、平均して3回に1回は23%以上の変動が起こるということです。言い換えると、ビットコインの長期投資家は、四半期に一度の頻度で経済ショック級の騰落に巻き込まれる、ということです。

この荒波を乗りこなすことで利益を得たいサーファー投資家には絶好のコンディションと言えます。ところが遠距離の航海で利益を得たい長期投資家には、なかなか耐え難いのではないでしょうか。

なお、この計算には上昇側の変動も含まれています。価格が暴騰しているときに苦しむ投資家はいないと思いますので、実際に苦しむ頻度はもうちょっと低いかもしれません。

いずれにせよ、ビットコインの長期投資を行いたいならば、この事実をよく踏まえたうえで挑戦されることをお勧めします。