CAPMにより求めるビットコインの期待リターン(再)
資本資産価格モデル(CAPM)を用いて様々な資産クラス、銘柄の期待リターンを求めてきました。過去、ビットコインの期待リターンを求めたことがあるのですが、条件(リスクの計算期間)を変えて再計算したところ結果が大幅に変わりましたので、再度記事にします。
ビットコインほど価格変動が激しいと、平均してどのくらいのリスクがあるのかを過去の実績から求めることは無理があるのでしょう。今回は前回の記事と全く結論が変わりますが、どちらが正しいのかは明言できません。確かなのは、それほど不安定な投資対象だということです。
前回からの変更点
資本資産価格モデル(CAPM)に適用するリスクの値は、通常過去実績から推定します。本記事では、過去実績をどこまで遡って推定するか、その計算期間を変更しました。前回は、2017年末から今年2月末までの約2年を対象としていましたが、今回は今年3月末までの7年間を対象としています。
変更した部分はこの1点のみです。それだけで結果が大きく変わってしまいました。それでは早速、詳しい計算に入りたいと思います。
計算の考え方や、免責事項などは前回記事を参考にしてください。前回同様、本記事も個人的な独自研究にすぎませんのでご注意ください。
ビットコインの価格推移と時価総額
以下のグラフは、ビットコインの月間の価格推移です。データはinvesting.comから引用しました。*1
参考のため、米国株ETFであるVTIの価格も並べています。VTIが左目盛り、ビットコインが右目盛りです。
これらの価格データから、月次リターンを計算します。同様にVTIのリターンも並べます。VTIは分配金込みのリターンです。先ほど同様、VTIは左目盛り、ビットコインは右目盛りで、スケールが4倍も違いますのでご注意ください。
以下のグラフがその結果です。
さて、これらのデータから共分散を求めます。結果を以下の表に示します。なお、今回の計算で使わないところは空白のままとしました。
次は時価総額を調べます。ビットコインの時価総額は、coinmarketcap.comのサイトから調べました。*2
このサイトによると、現時点での時価総額は約1000億ドルでした。
他の資産クラスの時価総額は、前回求めた値をそのまま使用します。ビットコインも含む全資産クラスの時価総額は100兆ドル超ですので、ビットコインの配分比率wは0.001程度となります。結果を以下の表に示します。
ビットコインの期待リターン
それでは、ビットコインの期待リターンを計算しましょう。
計算式は以下の通りでした。
今回も前回までの記事と同様、以下のパラメータを使用します。
- F:リスクフリー資産の期待リターン 2.35%
- δ:リスク回避度 4.75
- Σ:共分散行列 (前項の通り)
- w:市場ポートフォリオ配分比率 (前項の通り)
上記の式に基づいて計算した結果、ビットコインの期待リターンは、約10.7%となりました。
なお、前回の計算では、期待リターンは約0.6%という結論でした。全く違いますね。
確かに過去2年と7年ではビットコインの値動きが異なって見えるので、これほど大きな違いが出てくるのも仕方がないかもしれません。
実は2017年末以降のデータに限って計算しても、コロナショックの影響が大きく出た2020年3月のデータを含めるかどうかだけで、約5%も結果が変わってくることがわかりました。
前回の記事では、ビットコインの資産性は金(ゴールド)に似ている、と書きましたが、価格変動が大きすぎて、資産性が定まっているとはとても言えない状態ですね。
しかし、だからこそ投資妙味があるのではないか?
ウェルスナビのように、ビットコインを資産クラスに組み込んだらどういう運用になるだろう?興味が湧いてきました。具体的な運用方法を考えてみます。
そういえば、ロバート・キヨサキ氏は最近よくこんな言葉をツイートしていますね。
Gold and Silver - God's money
Bitcoin - People's money