ウェルスナビ 2年11か月間のパフォーマンス検証

ウェルスナビが投資初心者へのアピールで最もうまくいっている理由は、以下のような図を用いて、将来の運用成果とその具体的な確率を明確に示した点にあると思います。

下図はその例ですが、いま35歳の人が元手の100万円と毎月3万円の積立により、老後に必要な2000万円を達成するための、いわばロードマップとでも言うべきものです。

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この図の中心に白い線、その周りに濃い青色の領域、さらにその周りに薄い青色の領域があります。白い線は50%の確率で達成できる資産額、濃い青色の上端が30%の確率、下端が70%の確率で達成できる資産額を意味しています。

例えば、目標としている2000万円に達成する時期は、30%の確率で21年以内に、50%の確率で24年以内であるということを主張しています。30年で達成できる確率は70%を超えるということも読み取れますね。

 

さて、私もすでにウェルスナビで3年以上運用を継続しています。定期積立を伴う運用を開始したのは2017年末からなので、まもなく3年です。

この記事では、私の実際の運用結果が、ウェルスナビが示した予測通りに進捗しているかどうかを検証していこうと思います。

まずはこの白い線、つまり50%の確率で達成できるラインの計算方法を確認し、これを「ベンチマーク」と呼ぶことにします。その後、私の運用結果とベンチマークを比較して、いまのところこの予測が実現できているのかどうかを検証します。

 

ベンチマークの計算方法

この項は数学的説明です!結論は、ウェルスナビが想定する確率50%のラインは、年率4.62%だというものです。株式の運用がざっくり言って5%くらいと言われているので、手堅い数値だと思えますね。

 

本検証におけるベンチマークは、月次リターンが正規分布すると仮定した場合に50%の確率で達成できる期間収益率として計算します。

ウェルスナビのホワイトペーパーから独自に計算すると、リスク許容度「5」の期待リターンは6.98%くらいになります。

ここから手数料分(税込み1.1%)を控除し、5.88%とします。これを以下の式で月次に換算します。なお、式中のΔtは1/12年=0.0833年とします。

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次に、別記事で推定したリスクである14.9%を用いて、幾何的ブラウン運動の公式により期間収益率を計算します。

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以上まとめると、ウェルスナビのホワイトペーパーに記載されているリスク許容度「5」の期待リターンが実現できていれば、年率4.62%の複利で運用できるということです。これを今回のベンチマークとして採用します。

 

さらに詳しい解説は以下の記事も参考にしてください。

curvex.hatenablog.com

 

2017年12月末から2020年11月末までのパフォーマンス

私が毎月15万円の積立を始めた2017年末からのパフォーマンスを検証します。開始当時の総資産額が110万1019円でしたので、この金額から運用を始めたと考えることにしましょう。

運用結果が以下の図です。入金額の合計を面グラフ、ベンチマークを緑色の曲線、実際の運用結果を青の点付き折れ線で示しています。

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2020年11月末の総資産額は約718万円であり、ベンチマークの690万円を上回っています。ウェルスナビ風に言うと「50%の確率で690万円以上になります」であり、11月末時点では、その50%には入っていることがわかりました。

 

下図は直近1年を拡大したものです。

コロナショックがあったので仕方がないことですが、1年を通じてベンチマークを上回ったのはわずかな期間のみでした。8月末には一時的にベンチマークを上回ったものの、その後2か月間は不調に。11月の大幅上昇でようやく明確にベンチマークを上回ってきました。

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さて、この結果をどう解釈するのが良いのでしょうか?

「成績が思わしくない、ウェルスナビの言っていることは信用できない」

でしょうか?それとも、

「確率の話なので、良い局面も悪い局面もある。この結果だけをもってウェルスナビが間違っているとは言い難い」

でしょうか?

確かに不調な時期は続きましたが、まだ3年です。少なくとも私は後者の立場に立ち、この運用を継続していきます。ありきたりですが、投資の世界では客観的な正解を求めず、最後は自分の判断で行動していくことが大切ですね。

 

最後に一点だけ。上図のベンチマーク、いわゆる50%ラインですが、投資期間のうち半分の期間はこの線を上回らなければならない、という解釈は間違いですのでご注意ください。数学的には、この運用を何回も繰り返したら(タイムマシンで過去にさかのぼって、異なる未来を何回も引き起こすことができたら)、50%の確率で最終的にこの線を上回っているでしょう、という意味になります。